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翼をください
a0035483_9312275.jpgLOST AND DELIRIOUS
(2001年カナダ)
2005/2/11@早稲田松竹


17歳の少女がタクシー運転手をバッドで殺害し、性器を切断するという、1978年にカナダで実際に起きた事件をベースに、映画化。事件を映画化ってよりは、事件をベースに、映画化。


名画座に下りてくる前の公開時に、既に観てたので今回が2回目。2回目でも観たいと思わせる映画。わたしにはね。個人的な思い入れが強すぎるから。でもそういう見方で映画見てたっていいじゃん。てかそういう見方しかできないのね。特にこういうジャンルはね。

■あらすじ■母を亡くし、父の再婚相手ともうまくいかないメアリーは全寮制の女子寄宿学校に編入。ルームメイトのトリーとポーリーはどうやら恋愛関係。それもありかも、って受け入れるメアリーだけど、二人の関係はある日バレて校内の噂になる。優等生のトリーは焦って関係を解消しようとするけどポーリーはそんなの全然納得いかない。

主役のメアリーはただの狂言回し。それなりに彼女のエピソードもあるんだけど、むしろ蛇足。監督は『天国の青い蝶』のレア・プール。『天国の~』は駄作以外の何物でもないけどこれは好き。


■ネタバレないけど隠してみました■もはや映画の感想ではないんですが■





a0035483_103555.jpg実は見る前はこんな映画だとは思ってなかった。それはたぶん公開時のポスターや、ちらしの作り方なんかのせい。そこから漂う雰囲気は、わたしが大好きな『ヴァージン・スーサイズ』みたいなかんじだった。つまり、(いい意味&悪い意味で)ふわふわした空気感や透明感を全面に出した、痛切ない軽めの女の子映画かと思っていた。なのに。それなのに。一体なんなんだこの胸痛重苦しさは。


あぁ、人を好きになるってこういうことだよなぁ。みたいなのがストレートに伝わってきた。背景が寄宿制の女子校だし、同性愛を描いた青春映画ぽいかんじがしてたんだけど、これは恋愛映画だ。それもかなり直球の恋愛映画。

こういうふうに馬鹿みたいに一途に人を好きになってしまったことが1回でもあれば、ていうかわたし的にはここまで誰かを好きになれることなんて、人生に1回でもあれば幸せなんじゃないかと思ってるんだけど、そんな人なら絶対痛い。はず。

しかしなんであんなふうに向こう見ずに突っ走れるのか。ぶつかるしかないんだ。だってほかに方法を知らないから。周りにどう思われようと関係ない。それを見て、「わたしには過去の話」とか「もうこういうのはできないかも」という思いがよぎるわたしは、変なふうに大人になったんだなぁって思って、つくづく嫌になる。片方の子が、二人の関係を解消して前に進むことを「それが大人になるってことなのよ」みたいに吐くシーンがあるんだけど、そのセリフの意味が判るんだもの。嫌なくらい、理解できるもの。そして今のわたしは、いつからかその「大人」な行動を選択してばかりいる。人の目や、嫌われたくないという恐れや、自分を守るために。


初めて本気で好きになった人を、今でもときどき思い出す。わたしはその恋愛には、報われなかった。報われないのは、好きだったときから前提だった。手に入れることができないと判っているから、ただひたすら好きだった。好きでいるしかなかった。好きで好きで好きで好きで、どうしようもないくらい好きだった。そこまで好きになるほどの、人なんかじゃなかったかもしれない。中途半端にやさしいだけだった。つまりそんなのはいちばんやさしくない。全然好きなタイプじゃなかったはずのその人は、それ以来わたしの好きなタイプになってしまった。呪縛だ。わたしは過去の影から逃れられない。

好きだという気持ちを、手に入れられないということが判ってるくせに、求めるという行動にしか表せなかったわたしは相当ウザかった、と今思う。うざい女は嫌いだ。わたしはもう、重くなることを、ひたすら避けている。でも、この映画を見て、相手の迷惑なんか考えないで、自分の恥なんか考えないで、ただひたすらに好きって、単純にすごくうらやましかった。あんなに嫌っていた行動のはずなのに、なんでだろう。


好きな人の気持ちが離れてしまうのは悲しい。それを取り戻そうと躍起になればなるほど、惨めに空回ってしまう。その結果前よりも離れてしまう。どうにかしようとすればするほど、修復できない溝は広がっていく。

わたしはもう、躍起になれない。それよりも、きっと、自分の気持ちを冷まそうとするだろう。じたばたするのが格好悪いとか、そういうことを考えてしまうだろう。なんてつまんない人間になったんだろう。子供のわたしが今のわたしを見たらさぞかし成長することに対するやる気をなくすだろうな。



a0035483_1094689.jpg…なんてことを否が応でも考えてしまう映画。ここまで読んでくれた奇特なあなたはついでにこの映画も観てみてください。特に男の人の感想が聞いてみたいです。女の子はたいてい「痛い」と言います(わたしのごく狭く偏った交友関係調べ)

あ、ちょっとくらい映画に触れておこうかな。原題は"lost and delirious"無我夢中とか自暴自棄とかそんなかんじでしょうか。

邦題『翼をください』は新鮮さにはかけるけど、映画を見るとうまいタイトルだなぁと思いました。余談ですがわたしはこの原題を"lost and delicious"だとずっと思っていて、「あまずっぱい思い出」みたいなニュアンスで勝手に受け取っていました。見ればわかるけどあまずっぱいなんてどころの騒ぎじゃない、重たい映画です。

ハヤブサはラストやタイトルに絡むからともかく、フェンシングとかガーデニングとかもたつくエピソードはあるものの(このもたつきを最大限発揮したのが次作の『天国の青い蝶』、鬱陶しい、駄作)、感情移入度が妙に高い。悲劇に終わらせない、なんか爽快感すら残したラストシーンがよかったです。ちなみに日本版のDVDとかビデオだと、レズ系エロチック映画な売り方ですが、エロくないですよ全然。

『翼をください』(オフィシャルがもう消えてるのでamazonへ)
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by manamizw | 2005-03-14 08:26 | cinefil