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イフ・オンリー
a0035483_18593310.jpgIF ONLY
(1998年 イギリス/スペイン)
@aii-time favorite


ちなみに今「イフ・オンリー」でぐぐると今年公開のこの映画が出てきてしまいますが、これは命救ったりしないほうのイフ・オンリー、98年のイギリス映画です。これはもう、わたしの5本の指に入る恋愛映画。


「わたしの人生悪くないじゃん」と思いたいときに観る映画。
たすきのとこにも書いたんですが、それが
『イフ・オンリー』と『スライディング・ドア』の二本。

なんか気分が落ち込んでるときとか、この二本を観ると
「よし!これでいんだ」って思えるのです。
片方だけでもいんですが、連続で二本立てで観ると、かなり回復します。
ちなみに絶対『スライディング・ドア』→『イフ・オンリー』の順番です。


『イフ・オンリー』は、
「もしも、あの人とやり直せたら…」という
絶対誰もが一度は考えたことのある(よね?)テーマを主題にした映画。

『スライディング・ドア』は地下鉄に乗れたか、
一瞬の差で乗り遅れてしまったか、そのそれぞれの場合で
人生がどう変わっていくかを描いた映画。

つまり、どっちも「もしもあのとき」系。
あぁ、後ろ向きですね、嫌ですね。
でもわたし基本的に暗い人なので、こういうの大好きです。

『スライディング・ドア』の方が知名度が高いと思うので、
今回は『イフ・オンリー』を書きます。






■あらすじは、まぁこんなかんじで。■


売れない舞台役者のヴィクター、落ちぶれ飲んだくれのどっから見ても冴えない男。
8ヶ月前に別れた彼女が忘れられない。
でも別れた原因ってのは自分が同じ劇団の子と浮気して、
しかもそれをご丁寧にも自分から白状してしまったってことなんだけど。

別れた彼女はジムで出会った新しい男とかなり順調で、
しかも明日にはそいつと結婚してしまう。
あせったヴィクターは「俺が悪かった、やり直してくれ」と
何度もしつこく頼み込むんだけど、
彼女は全然相手にしてくれない。(当たり前だ)

a0035483_19554873.jpgそしてまたぐだぐだと飲んだくれるしかないヴィクター。

「あぁ、あんとき、俺が浮気したことをバラさなきゃよかったんだ」。
(ていうかここで「浮気しなきゃよかった」じゃなくて「バラさなきゃ良かった」って思ってるっていうのが、非常に自分勝手で都合よくていいです。)



さて、ここであまりにも唐突過ぎてびっくりするんだけど、
非常にマジカルなことが起きて、
なんとヴィクターは念願かなって過去に戻れてしまいます。
しかも、浮気する前、ではなくて、浮気した朝帰りの途中。
都合いいですねー。浮気は必然だったんでしょうね。

さぁこれで、彼女にはうまいこと言い訳してなんとか場を収めれば
二人はまたうまくいくはず!なんですが…



■この映画、おもしろいか、おもしろくないか?■

この辺までは、映画の流れもヴィクター同様非常にだれだれとしていて、
なかなか「おもしろい!」とは言いかねます。
普通の地味な恋愛映画と思って観てたら
いきなりタイムスリップとかしちゃってるし。
初めて観たときは、「え?この映画大丈夫?」という不安がよぎってしまいました。
しかも主人公のヴィクターがありえないくらいダメ男。
ほんとすげえだめっぷり。目とか死んでるし髪とかぼさぼさだし
なんつうか、生気がない。ただでさえ「こんな男じゃだめだろう」って男が
さらに昔の恋愛に激しく固執している、という輪をかけただめっぷり。

でもおもしろくなってくんのが中盤以降。

■ねたばれしてます。■

浮気の一件を丸くおさめたヴィクターは、これまでとがらりと変わって
「尽くす男」になっちゃいます。
そりゃ、あんだけ後悔しまくっててひきずりまくってた恋愛、
なんでかしんないけど戻ってやり直せてるんだから、マメにもなっちゃうよ。
やっと念願かなったんだから、「絶対に二度と失いたくない」とか思っちゃうよ。
料理してみたり禁煙してみたり(彼女の前でだけだけど)
前は嫌がってた、彼女が好きなアート系の映画に進んでつきあう。
甲斐甲斐しいとは、こういうことを言うんでしょう。
すっかり生まれ変わったヴィクター、彼女をつなぎとめようとする
その必死さ。痛々しいほど一生懸命です。
でも必死さが笑えてしまう、ヴィクターのキャラなんだけど。

じゃーそれで二人はうまくいくか、つうと。




いかねんだよな!

彼女は、甲斐甲斐しいヴィクターに物足りなさを感じてきてしまうのです。
そして新しい男と出会い、今度は彼女が浮気をしてしまう。

a0035483_2023672.jpg結局、やり直そうとしてみた過去で、今度は彼女の浮気が原因で、ヴィクターが振られてしまう。

しかもその浮気相手は、ヴィクターが過去に戻る前、彼女が結婚しようとしていた男。ヴィクターがどうがんばって、彼女の「未来の結婚相手」と出会わないように出会わないように小細工していても、結局二人は出会って、恋に落ちてしまったのです。


■映画は、まだ続きます。■

「運命は変わらない」
これって結局こういう映画にありがちな展開かもしれません。
でもこの映画のおもしろいのが、
「ヴィクターをふった彼女が、新しい恋人とうまくいかなくなって
今度はその彼女のほうがヴィクターと別れたことを後悔しはじめる」
ということ。

ヴィクター視点で動いていた展開が、
今度は彼女視点に上手に移っていってるのです。

いつのまにかスライドされたその視点は、しかし
ただ単に男の視点から女の視点へ移ったのではなく、
「後悔している」ほうを視点にして描いている。
要するにこれは、

「やりなおしたい」という都合のいい気持ちを常に描いている映画。

新しい出会い、過去の恋人、
現状の不満の積み重ね、過去の美化。
後ろを向くか、前を見るか、
愚痴を吐くか、一歩踏み出すか。
ふるのとふられるのではどっちがより引きずるのか。

いいです、この映画。大好き。
こういう「あえて口に出すまでもないけど、でも内側ではどうしても揺れてしまう気持ち」が、
さらりと、でも繊細に描かれていて、
前半のダレダレ度とは打って変わって
かなり集中させられます。

a0035483_2015154.jpg
単純なハッピーエンドではなく、
かと言って悲しい終わり方でもなく、
ちょっと痛さを残したまま、でも悪くない二人の結末。
かなり余韻に浸れます。


****


誰でもそうだと思うけど、
ここまで生きてきたまでに、いろんな選択を繰り返しています。
自分で選んだことに後悔はしていないと、はっきりそう言い切れます。
でも、「本当にそうかな?」と弱気になってしまうときも、なくはない。

自分が下した選択以外にも、ちょっとしたこと、例えば
『スライディング・ドア』のヘレンのように
電車に乗れた/乗れないみたいな小さなことが、
予想外な展開を生んで、今ここに自分がいるのかもしれない。

何がプラスになって、なにがマイナスになるかなんて
今は全然わかんないし、見えてないし、
そういうこと考え始めてもしょうがないのはわかってるんだけど、
ときどきどうしてもよぎってしまう。
過去のすごく小さな出来事が、すごくいいこと/悪いことの引き金になっていたとも限らない。

「わたしこれでいいのかな?」
「なんかどっかで間違えちゃってないかな」

そんなこと考えてもしょうがないんだけど、
そういう不安がどうしても浮かんでしまうとき、
これを観ると大丈夫って思えるのです。
「きっと今、これはこれで正しい!」と思ってしまうのです。

結局、出会う人とは出会うし、
別れなくちゃいけない人とは別れてしまうし、
起こるべきことは起こる。
例え今まだ出会えていなくても、
時間やタイミングがずれているだけで、
きっと巡りあえる(人だけじゃなくて、物やことにも)って気になるのです。
「よし、じゃー今このままがんばる」って気になっちゃいます。
(すいません、単純で。)

****


前半ではダメダメなヴィクターが、中盤以降はめきめきとかっこよくなってきます。
あの死んでた目が、すごい生き生きしてますから。
ひとりの男の人のこの変化だけで、「あぁすごい」と思ってしまいました。
でもこの人、他にあんまし映画出てないみたい、残念です。

ヴィクターは一度の浮気で、朝帰りして即浮気のことを白状してしまいますが
彼女の方はかなり継続的な浮気関係を作ってから別れを切り出す、つうのがまた
いかにもな感じでおもしろかった。
あと、落ちて壊れたギターを呆然と見つめるシーンとか、
ちょっとやられてしまいました。

a0035483_191413100.jpgちなみに、公開時のタイトルこんなに違います。
If Only... (Australia) (France) (UK)
Twice Upon a Yesterday (USA) 。
IMDBだと
The Man with Rain in His Shoes(1998)

←出始めのペネロペが出てます。この頃の彼女ってほんとかわいい!


自分がすごくすごく好きなので、
無理矢理周りに押し付けて感想を強制的に言わせたくなるほどの映画です。
(実際にわたしからその被害を蒙ったことのある人たち、ごめんなさい。)
こういう映画こそぜひDVDにしてほしい!
中古で買ったVHSが今すごく貴重なものになってしまった。
レンタルとかに今おいてあるのかな?
あんま見かけない気がする。

ここまで読んでくださった方、もしこの映画レンタルとかで見かけたら
ぜひ観てみてもらえませんか?
ほかの人の感想が聞いてみたいのです。

読んでくれた方ありがとうございます!
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by manamizw | 2005-07-07 20:52 | cinefil