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ヴェラ・ドレイク
a0035483_11485190.jpgVERA DRAKE
(2004年イギリス/フランス/ニュージーランド)
2005/2/16@早稲田松竹


地味ーな『キンゼイ』と並んで、これもまた地味な映画だなぁと思ったんだけど(存在がね)、キンゼイと違うのは、面白かったということ。重たいけどね。



人工妊娠中絶が法律で禁止されていた時代に
(中絶が認められるにはかなりの費用と
医者と精神科の診断書、それも「親戚に自殺した頭のおかしい人がいて
私も自殺しそう」とかの嘘が必要で、
でも産めない状況の妊娠をしてしまうのは
金持ちばっかりじゃーないんだから。

んでそういう人のために中絶させてあげてたのがヴェラ・ドレイク。

マイク・リーと言えば台本を用意しないで
役者に即効的なリハーサルを重ねさせて映画を撮る人。
と初めて聞いたとき、「まさかそんな」と思ったけど、
『秘密と嘘』を観て納得した覚えがある。
その演出方法のせいかなんなのか
この人の映画には嘘臭さがないように見えて。
妙な説得力が宿ってるっつうか。

かなりねたばれ。無駄に長いし。



ヴェラ・ドレイクの家庭はあたたかい。
ヴェラ・ドレイクその人のようにあたたかい。
一方で、ヴェラが堕胎を手助けする人たちは、一様に暗い。
これから堕胎しようとしてるんだから当たり前だ、
あからさまに怯えて体が動かなかったり半泣きだったり、
どうってことないっていう態度を取っていたりしてても
見ていてつらくなる。つらすぎて見ていられない。

映画はヴェラの家庭の様子と、
ヴェラが手助けする堕胎のシーンを交互に描くので
より両方の温度差が際立って、痛くてたまらない。

これもまた『キンゼイ』と同じく、今とは時代が違うので
中絶に対する当時の捉え方が、私にはわからない。
宗教的な考え方もあるのかもしれないけど。


a0035483_1315036.jpgヴェラにしてみたら、あくまで
「困ってる女の子たちを助ける」人助けでしかなく、
法を犯すことよりも、
困っている人を放っておくことのほうができなかったのだろう。

だからと言って、ヴェラが法を犯したことを罰されない理由にはならない。
けどヴェラ、もしくはヴェラみたいな人がいなければあの人たちはどうなっていたのか、と。

ていうか男の人はきっと
彼女たちが妊娠してることすら
知らされないんだろうなぁ。
どうよ?

ヴェラの堕胎処置は注入器で石鹸水を流し込む、とかいう
おっかないやり方で(ヴェラ本人は「大丈夫よ」みたいなかんじなんだけど
実際処置された人は病院に運び込まれてしまって
それが原因で警察にバレる)、
あーやだもう、私あんなん体に入れたくない。おっかないよ。

私はやっぱり『キンゼイ』を観たときと同じく、
「あー今の時代に生まれててよかったなぁ」と思った。
明確な、産めない理由があるときに、そういう選択が取れるということは。
いくら法律で禁じていても、産めない人は産めないよ。
経済的な理由とか、レイプされてできてしまったとか、そんな人もいるわけで。

私は今まで妊娠したことも出産したことも中絶したこともないんだけど
セックスしている限りそのどれかの可能性というのは常にあるわけで
でも、どういう判断を自分が下すかは 
そのときにしか解らない。
私は子供をつくるためのセックスはしたことがない。

いつ妊娠してもおかしくないようなやりかたを、
何十回も、それ以上も繰り返していて、
それなりにひやひやしたこともあるけど、そういうことにはならなかった。
私は、自分は妊娠するときは
意外とあっさり妊娠してしまうんじゃないかと思っている。
そしてそうなったら、その相手を「この人なんだなぁ」と思って
自分の運命だと思って受け入れてしまうかもしれない。

「妊娠したら必ず産む」とか「必ず産まない」とかは、決めてないけど
なんとなくそう思ってる。

以前に、私を所有しようとした男の人が
普段は絶対気をつけていたのに、危険日生中出しをした。
私はそのとき、もう彼から心が離れていて
彼もそのことを知っていた。

「妊娠して」と言ったその人の、追い詰められた感に
悪いけど私は少しぞくぞくした。
そしてもう
この人はこういうふうにしか
私を手に入れられないんだと思った。

結局彼とは別れて、普通に生理がきた。
やっぱり彼じゃなかったんだ、と私は思った。


なんの話だ?映画に戻ろう。

映画自体はね、でも中絶はあくまでサブテーマみたいなもんで、
メインは家族だと思うんだけど。
ヴェラとそのだんなさんの夫婦が、愛情溢れててすごくよかったな。
だんなの弟が、「ヴェラのハートは金(ゴールド)だよな」って言うと、
だんなが「ダイヤモンドだよ」って言うの。印象に残りました。
ぶさいくで地味だけど素朴な娘とか。
若くて青くてヴェラを非難するけど、でもやっぱり母を愛してる息子とか。
ラストシーンの終わり方も好き。

典型的イギリスおばちゃんなかんじがいいなぁ。
語尾に「,dear」がつくの。
んですぐお茶をすすめる。
ごはん食べていきなさい、これどう?これ食べる?これは?これは?こっちは?みたいな、
矢継早に早口で畳み掛けるかんじ。
『ロード・オブ・ザ・リング』でさ、一部の一番始めのほうのシーンで
ビルボがガンダルフに
「お茶飲む?あ、酒?ケーキ食べる?これは?あ、そういえばたまごがあった…」
みたいなかんじで一人で喋くりながら
ちょこまか動き回るところを思い出したよ。

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by manamizw | 2006-02-17 02:02 | cinefil